第六章 妖刀跋扈編 水の章  第三話 「金の胎動」

こんにちは、みずはです。

今日は小説の日ですよ〜 ( ・ω・)っ


〜前回までのあらすじ〜

湖刀美はごく普通の女子高生だった。
だが親友の陽子が封印されていた妖刀・村正に憑依されてしまった為、
神社の祭神・刀破から神剣『神明剣』を授かり光の巫女として戦う事に。

激闘の末に陽子を元に戻したものの、
村正は破片となって町中に飛び散ってしまった。
その破片に取り憑かれた少女と戦い、
破片を集める湖刀美。
その戦いの中、
陽子・水母・瑞羽の三人に加え、
後輩で学園のマスコットである珠美も仲間になった。

菜月を交えた取り留めのない話。
その菜月のあまりのマイペースぶりに、
湖刀美達はただ翻弄されるばかりだった。



『ソードブレイカー 湖刀美』

第六章 妖刀跋扈編 水の章  第三話 「金の胎動」

 ワァァァァ…
放課後、
観客の歓声で満ちているライブ会場に湖刀美と水母は来ていた。
ステージでは綾音達『Passionate Flier』のメンバーが、
軽快でそれでいて心地よいメロディーを奏でていた。

ライブが開始してから一時間程した頃、
不意に水母が不自然に体をよじらせた。
「…んっ…。」
「どしたの?
 水母ちゃん?
 また気分が悪くなってきたの?」
それを見て湖刀美が水母に尋ねた。
「…えっ?
 あっ、いえ、
 そういう訳ではないんですけど…んっ…。」
「じゃあどしたの?
 なんだか気持ち悪そうなんだけど…。」
「…えっと…あの…んっ…、
 最初はなんともなかったんですけど…、
 何か段々…、
 針で体中をちくちくつつかれてるような感じがしてきて…。」
「針で…?」
「…多分…気のせいだとは思いますけど…、
 その割には…その感触がはっきりしてて…んっ…。」
「どういう事なんだろう…?」
すると湖刀美の胸に小さな光の玉が現れた。
 ポゥッ…
「刀破様?」
『この音楽からわずかではありますが「金気」を感じます。
 それが「木気」を操る水母さんに影響を及ぼしているのでしょう。
 「金気」は「木気」の弱点ですから。』
それを聞いて湖刀美は戸惑った。
「綾音達の音楽に…『金気』が!?
 どうして…まさか…!?」
『ええ。
 おそらく今までそうであったように、
 綾音さんにも「金気」を操る力が身についたものと思われます。』
「そんな…綾音にまで影響が…!!」
『とりあえず「金気」に対する防護結界を水母さんに張ります。
 それでこの場はしのげるでしょう。』
「…す、すみません…。」
『このライブが終わった後、
 綾音さんに確認しに行きましょう。
 そうすればはっきりするはずです。』
「わ、わかりました。」
「…はい…。」
刀破の言葉に湖刀美と水母はうなずいた。

「失礼しまーす!」
 ガラッ!
ライブが終わった後、
湖刀美と水母は綾音達の控室を訪れていた。
「あ、湖刀美!
 それに水母ちゃんも!
 いらっしゃい!」
そう言って綾音が湖刀美達を中へ入れた。
「あっ、湖刀美ちゃん!
 お祝いに来てくれたの!?
 嬉しい!!」
「サンキュ、土御門。」
「土産はねぇのかよ?」
「全く…いい加減その悪い口直しなよ、海都。」
「そうだぜ。
 それがお客さんに利く口か?」
海都の言葉に即座に華蓮と綾音が注意すると、
半ばふてくされたように海都が言った。
「あー、悪かったよ。
 サンキュな、土御門。」
「いいよ。
 海都がそんなキャラだってわかってるからね。」
「ちぇっ、ひでぇ言われようだな…。」
「お前の場合自業自得だろ?」
「なんだよ、翔まで…まぁ違いねぇけどよ…。」
「ところで綾音、
 今日はもう上がりなの?」
「ん?
 ああ、ここの掃除が終わったらな。」
すると湖刀美が遠慮がちに尋ねた。
「そうなんだ。
 ねぇ、その後ちょっと時間いいかな…?」
「何だ?
 何か用でもあんのか?」
「う、うん。
 ちょっと聞きたい事があって…。」
「ああ、わかった。
 んじゃちょっと待っててくれよな。
 すぐに終わらせるからよ。」
「それじゃ部屋の前で待ってるね。」
そう言うと湖刀美と水母は控室を出た。

それから二十分程した頃、
華蓮と翔と海都が控室から出てきた。
 ガラッ。
「あっ、華蓮ちゃん。
 掃除終わったの?」
「うん、終わったよ。」
「綾音は?」
「中でギターの手入れしてる。
 いつも念入りにやってるから。」
「そっか。
 んじゃまたね、華蓮ちゃん。
 それに翔、海都も。」
「うん、またね。
 湖刀美ちゃん。」
「ああ、またな。」
「じゃあな。」
三人が去った後、
湖刀美と水母は控室に入った。
「もういい?
 綾音。」
「ん?
 ああ、ちょうど今ギターの手入れが終わったとこだよ。
 んで何だ?
 聞きたい事って?」
そう言うと綾音は湖刀美達の方を向いた。
「う、うん…。
 あのさ、綾音…、
 最近…変わった事とかって…無い?」
「変わった事?
 何だよ?
 いきなり?」
「えっと…た、例えば…、
 変な力が身についたり…とか…。
 …って…そ、そんな事無いよね…。
 あは、あはははは…。」
「湖刀美…。」
湖刀美が自分の言葉をごまかすように笑うと、
綾音が神妙な面持ちで口を開いた。
「な、何?」
「実はさ…あるんだよ…。
 その…変な事がさ…。」

「えっ…!?
 ほ、本当!?
 綾音!?」
「ああ…。
 おとつい…ライブの音響テストをしてる時にさ…、
 俺がギターを弾いてたら突然スピーカーが壊れたんだよな…。」
「スピーカーが!?」
「それだけじゃないんだ…。
 昨日のリハの時なんか、
 ギターを弾いてたらいきなり弦が切れたんだぜ…?
 新品に換えたばっかだってのに…。」
「…そんな事があったんですか…!?」
「よくよく考えたらさ…、
 どっちも曲に入り込んで夢中になってる時に起きてんだよな…。」
「それって…!?」
「…集中していて他の事を考えていない時、という事でしょうか…?」
「なあ、湖刀美…何か知ってんのか…?
 やっぱ…あの事件が関係してんのか…?」
その言葉に湖刀美と水母は顔を見合わせた。
そして意を決したように湖刀美が口を開いた。
「うん…、
 多分…あの事件が原因だと思う…。
 あのコウモリに取り憑かれたせいで、
 綾音に不思議な力がついたんだよ…。」
「やっぱ…そうなのか…?」
『私が説明しましょう。』
 ポゥッ。
突然声が響き、
湖刀美の胸に光の玉が現れた。
そしてそれが湖刀美から分離して刀破の姿になった。
 スゥッ…
「刀破様…。」
「あんたは…確かステージを元に戻してくれた…。」
『私の名は土御門刀破。
 湖刀美の先祖であり、
 土御門神社で祭神として祀られている者です。』
刀破の言葉を聞いて綾音は驚いた。
「祀られて…って…じゃああんた…神様なのか!?
 何でそんな人が湖刀美に!?」
「えっと…あのね…。」
そう言って湖刀美はこれまでのいきさつを綾音に話した。

「信じられねぇ…そんな事が起きてたなんて…。
 でも…あんな事があったんだから信じるしかねぇよな…。」
『すみません…綾音さん。
 あなたまで巻き込んでしまって…。』
「いや、あんたが謝る事ぁねぇよ。
 妖怪が誰に取り憑くかなんて予想できねぇもんな。」
「…綾音さん…。」
『それでですが、綾音さん…。
 あなたには「金気」を操る力が身についているようです。』
「ご…『金気』?
 な、何なんだ?
 それ…?」
綾音が戸惑うと刀破が説明した。
『「金気」の「金」とは金、
 すなわちこの世に存在する金属や鉱物を示しています。
 「金気」とはそれらの持つ気の事です。』
「え、えっと…それで…つまり何ができるんだ…?」
『つまりありとあらゆる金属・鉱物を自由自在に操る事ができます。
 それから金気をその身に宿す事で体を硬質化させ、
 何物をも通さぬ盾や、
 あらゆる物を斬り裂く刃を作り出す事ができます。』
「そんなすげぇ力が…俺の体に…?」
『できる事ならこれ以上あなたを巻き込みたくないのですが…、
 その秘めたる力はすさまじいものがあります…。
 これからどうするかはあなたの意志に任せます。』
刀破の言葉を聞いて、
綾音は腕組みをして考えた。
「これからどうするか…?
 う〜ん…。
 なあ湖刀美、これからもまだ妖怪が出てくんのか?」
「えっ?
 う、うん…多分…出てくると思う…。
 まだ破片は残ってるし…。」
「わかった。
 俺も湖刀美と一緒に戦うぜ!」
「綾音!?」
「…いいんですか…!?」
「まぁな。
 こんな中途半端に関わったまんまでほったらかしにできねぇよ。
 それに俺達の町を無茶苦茶にしようとするなんざ許せねぇからな。」
そう言って綾音はニッと笑った。
『やはりそうですか…。
 ならばあなたにこれを渡しておきましょう。』
 ポゥッ。
刀破がそう言うと刀破の前に小さな光の玉が現れ、
中央に白い勾玉をあしらった首飾りに変わった。
それを刀破は綾音に手渡した。
「これは?」
『金気を司る神獣、
 白虎(びゃっこ)の力を込めた勾玉です。
 それを身に着けていれば力を自由に操る事ができるでしょう。
 また、力の暴走も防いでくれるはずです。』
「これが…俺の力を?」
『綾音さん、湖刀美の力になってやって下さい…。』
 フッ…
そう言うと刀破は光の玉になり、
湖刀美の中に戻っていった。

「ねぇ…本当にいいの、綾音…?
 どんな奴が出てくるかわからないんだよ?」
湖刀美が尋ねると綾音はウインクして言った。
「構わねぇよ。
 俺達ダチだろ?
 遠慮なんていらねぇよ。」
「…綾音さん…。」
「しかしそうなるとアレだな。
 歌ってギターも弾けて戦いもできる、
 最強のミュージシャンってかぁ?
 そいつぁいいや!
 いっちょバトルライブでもやってみっか!」
「ちょ、ちょっと綾音…、
 あまり調子に乗らないでよ…。」
「冗談だよ、冗談!
 まあとにかく、
 俺が仲間になったんだから大船に乗ったつもりでいろよな!
 ははははっ!」
そう言って綾音は湖刀美の背中を叩いた。
 バシバシバシバシ!
「ちょっ、痛い、痛いって…!
 だから調子に乗らないでよ…!」
「大丈夫だって!
 はははははっ!」
 バシバシバシッ!
「…あうぅ、痛そうですぅ…。」
「うう…痛そう、じゃなくって本当に痛いって…。」
「はははははっ!」


−続く−

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