第五章 妖刀跋扈編 金の章  第六話 「猟血ライブ」

こんにちは、みずはです。

…明日、顔を出しに時計前へ行きます。
許して下さっても、
許して下さらなくても、
どちらでも構いません。
…会いに、行かせて下さい…。


〜前回までのあらすじ〜

湖刀美はごく普通の女子高生だった。
だが親友の陽子が封印されていた妖刀・村正に憑依されてしまった為、
神社の祭神・刀破から神剣『神明剣』を授かり光の巫女として戦う事に。

激闘の末に陽子を元に戻したものの、
村正は破片となって町中に飛び散ってしまった。
その破片に取り憑かれた少女と戦い、
破片を集める湖刀美。
水母・瑞羽を仲間に加え、
四人で村正に立ち向かう事になった。

公園を調査した翌日、
放課後のライブを楽しみにする湖刀美達。
だが一方で、
バンドのリーダー・綾音はメンバーを傀儡と化し、
ライブに向けて策を巡らせるのだった…。


『ソードブレイカー 湖刀美』

第五章 妖刀跋扈編 金の章  第六話 「猟血ライブ」

 ワァァァァ…
ステージに綾音達が現れると、
会場が歓声に包まれた。
「みんな!
 今日も俺達のライブに来てくれてサンキュな!
 それじゃあ今日もはりきっていくぜ!!」
綾音がそう言うと会場がさらなる歓声に包まれ、
軽快なメロディーが流れ出した。
「今日はどんな新曲が出るんだろうね、湖刀美ちゃん。」
「…特別な趣向と言うのも気になります…。」
「そうだね。
 綾音の事だから、
 何かすごい演出でも考えてるんだろうね。
 (でも…何だろう?この不安な気持ち…。
  何か…嫌な予感がする…。)」
三人でライブを楽しんでいたが、
湖刀美だけは何か言い知れぬ不安を抱いていた。

そんな中ライブは順調に進んでいった。
そして一時間が経過した頃、
綾音がマイクで語りだした。
「さてさて、
 この『Passionate Flier 結成一周年記念一週間連続ライブ』も今日で四日目!
 折り返しに差しかかったぜ!
 このライブの為に俺達はいっぱい新曲を用意したんだ!
 毎日一曲ずつ新曲を披露して、
 最終日に全曲演奏するつもりなんだぜ!
 だからってラストしか来ないなんて横着はしないでくれよな!」
 ドッ!
綾音がそう言うと観客から笑い声が上がった。
「それじゃあ今日の新曲行くぜ!
 『Bloody Scream』!!
 Here we go!!」
その綾音の合図で、
激しく、それでいて重苦しいメロディーが流れ始めた。
「な、何?
 この曲…なんか…嫌な感じ…。」
湖刀美がそう言った瞬間、
周りの観客が次々と青ざめた表情で倒れ始めた。
 バタ…バタ…
「えっ!?
 こ、これは!?」
「…う…うぅ…はぁ…はぁ…。」
隣からの苦しそうな声に気づいて湖刀美が隣を見ると、
水母が苦しそうに息を荒げていた。
その表情は青ざめていた。
「水母ちゃん!?
 大丈夫!?」
「…く…苦しいです…、
 この曲を聞いたら…急に…。」
「だ、大丈夫!?
 水母さん!!」
陽子も水母のそばに寄ってきた。
「陽子は大丈夫なの?」
「今の所は…。
 少し…気持ち悪いけど…。」
「陽子、
 水母ちゃんが危ないから、
 水母ちゃんを連れて外に出て!!」
「う、うん、わかった!」
「水母ちゃん、歩ける?」
「…は、はい…なんとか…。」
「水母さん、こっち!」
 タッタッタッタッ…
そう言うと陽子は水母の手を引いて出口に向かった。

それを見送ると湖刀美は再び周りを見た。
するとほとんどの観客は気を失って倒れており、
会場から避難する者はごくわずかだった。
「ひどい…何でこんな事に…!!
 (まさか…これが綾音が言ってた、
  「特別な趣向」…!?)」
湖刀美はステージを見た。
すると歌っている綾音の姿は異形に変じていた。
着ていた衣装は漆黒に染まっていた。
両手足はそれぞれ肘、膝の先から黒い毛に覆われ、
指先には鋭い爪が生えていた。
頭にはコウモリのような大きな耳があり、
口からは牙を覗かせていた。
背中からはコウモリのような大きな黒い翼が生えていた。
そして手にしているギターは、
コウモリをイメージした独特の意匠を施した物になっていた。
「さあ…可愛い生贄ども…。
 俺にその血を捧げろ!!」
 ジワァァ…!!
綾音が叫ぶと倒れた観客達から赤いもやのような物が立ち上り、
綾音に吸い込まれていった。
「くくく…力がみなぎってくる…もっとだ!
 もっと俺に血を捧げろ!」
「あ、あれは!?」
その光景を見て湖刀美が声を上げると、
湖刀美の頭の中で声が響いた。
〔あれは血の素となる精気…「血気(けっき)」です。〕
「『血気』!?」
〔今の綾音さんから奴の気を感じます…。
 今度は彼女が奴の破片に憑依されたようですね…。〕
「嘘…今度は綾音が…!?
 何で…昨日は何ともなかったのに…!!」
〔どうやらあの後に憑依されてしまったようですね…。
 綾音さんの音楽を利用して、
 多人数から一気に血を奪い取るとは…。
 それにしてもこの気は…。
 水母さんにすぐ影響が出たのもうなずけます…。〕
「えっ!?
 どういう事ですか!?」
刀破の言葉に湖刀美は戸惑いながら尋ねた。
〔綾音さんから強い「金気」を感じます。
 どうやら今の彼女は金性の妖となっているようです。
 陰陽五行においては「金克木(ごんこくもく)」、
 つまり木性は金性に弱いのです。
 それ故に木気を操る水母さんに強い影響が出たのでしょう。〕
「それで水母ちゃんがあんな事に…。
 あっ、そういえば華蓮ちゃん達は!?」
湖刀美が慌てて綾音の後ろを見た。
しかしこんな惨状が起こっているにもかかわらず、
三人は虚ろな表情で演奏を続けていた。

「えっ…何で演奏を続けてるの…!?
 こんな事になってるのに…!!」
〔あの目…、
 どうやら華蓮さん達は綾音さんに操られているようです。〕
「そんな…綾音があんなに大切にしていたメンバーなのに…!!」
〔早く綾音さん達を止めましょう。
 急がないと観客の人達が全ての血気を抜き取られて死んでしまいます。〕
「は、はい!」
そう言うと湖刀美は目を閉じた。
(神明剣…私の想いに応えて!)
 ポゥッ…
湖刀美が念じると、
湖刀美の前に汚れ無き純白の刀が現れた。
「神剣抜刀!」
 パァァァ…!!
湖刀美が目を開いて刀を抜くと、
その刀身から光が溢れ出し、
湖刀美は光の巫女に変身した。
変身を済ませると湖刀美はステージの前に駆け寄った。


−続く−

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