第一章 妖刀復活編  第二話 「暗雲」

おはようございます、みずはです。

今回から物語が動き始めます。
それと同時に、

「うちの(隠された)趣味が段々出始めます」。

皆様心してご覧下さい…。
m(_ _;)m


『ソードブレイカー 湖刀美』

第一章 妖刀復活編  第二話 「暗雲」

もともと湖刀美と陽子は幼馴染であり、
小さい頃からよく一緒に遊んだ親友だった。
湖刀美は活発で明るく、陽子は逆に内気で大人しい性格だったが、
お互いに惹かれあうものがあるのか自然に仲良くなっていた。
そして湖刀美の影響を受けて次第に陽子も誰とでもすぐ打ち解けるようになっていった。
小学校高学年の頃から陽子が歴史の中の民俗学に興味を持ち始めた為、
幼馴染のよしみで湖刀美の家の神社の蔵の宝物を見せてもらっていた。
それは本来一般には公開していない物だったが、特別に許可してもらっていた。

「ただいまー。」
「おじゃまします。」
「おぉ、お帰り湖刀美。
 それからいらっしゃい陽子ちゃん。」
家に着いた二人を出迎えたのは湖刀美の祖父だった。
彼は家の神社である「土御門神社(つちみかどじんじゃ)」の神主をしており、
また自身が強い霊力を持っていてお祓いや除霊も行っていた。
「今日も蔵かね?」
「そうだよ、おじいちゃん。
 いいよね?」
「もちろんじゃとも。
 湖刀美の頼みなら何だって聞いてやるわい。」
「もう、おじいちゃんったら…。
 んじゃ行こっか、陽子。」
「うん。
 ありがとうございます、おじいさま。」
「気をつけるんじゃぞ。」

「相変わらずだね。
 湖刀美ちゃんのおじいさま。」
「全くいつまでたっても孫に甘いんだから。
 まぁ、剣術の稽古の時だけは厳しいんだけどね。」
「確か家に代々伝わる剣術があるんだよね?」
「うん。
 土御門流剣術って言うんだ。
 ご先祖様が退魔の秘術と剣術を組み合わせて編み出した退魔剣術らしいんだけど…、
 今では秘術を使いこなせる人がいないから剣術だけになってるんだよね。」
「そうなんだ…。
 秘術と剣術を組み合わせた退魔剣術かぁ…。
 秘伝書とかあったら民俗学的な価値は計り知れないよね…。
 うふ、うふふふふ…。」
「ちょ、ちょっと…怖いよ陽子…。
 けどおじいちゃんったらさぁ、
 稽古中は厳しいのに稽古が終わると手のひらを返したように激甘になるんだよ?
 『大丈夫じゃったか?痛くなかったか?』って。」
「そ、それも凄いね…。」
「ホント調子狂っちゃうよ。
 稽古中はこっちも気を張り詰めてやってるのに、
 終わったらいきなりそう来るもんだから必要以上に気が抜けてどっと疲れちゃうんだよね…。」
「あはは…。」
話し込んでいる内に二人は大きな木製の扉の前に着いた。
「…っと、着いたよ。」
そう言うと湖刀美は持ってきた鍵で扉にかけられていた錠前を外した。
「それにしても不思議なんだよね…。」
「ん?何が?」
「もう何回もここに来させてもらってるのに、
 未だに玄関からこの蔵までの道を覚えられないんだよね。
 私そんなに覚えは悪くないはずなのに。」
「あぁ。
 昔おじいちゃんから聞いたんだけど、なんかご先祖様が結界を張ってるんだって。
 色々ヤバイ物が多いから。
 その結界のせいで入り口が分からなくなってて、
 自由に入れるのはこの土御門の家の人間だけなんだって。」
「それで全然覚えられないんだ…。」
そんな会話を交わしつつ二人は蔵の中へ入っていった。
「えっと…まだ見てないのってどの辺だったっけ?
 ウチの蔵って外見に反して異常に広いからなぁ…。
 これも結界のせいらしいけど…。」
「えっと…確か…」
そう言いながら二人はどんどん奥へと進んでいった。

湖刀美が言っていたのは事実であり、
蔵の中は結界によって空間が歪められていて異常なまでの広さを誇っていた。
この結界には二つの存在理由があった。
一つは侵入者を防ぐ為、
もう一つは中で封印が解けて目覚めた妖が外に出るのを防ぐ為であった。
しばらく進んだ後、5分程歩いた辺りで陽子が足を止めた。
「確かこの辺だったと思う。
 こっちの棚に並んでる物は見覚えがあるけど、
 ここから先は見た事が無い物ばかりだもの。」
「そっか。
 んじゃ早速見ていこっか。
 実は私も結構楽しみなんだ。
 珍しい物とか出てくると面白いし。」
「ふふっ、湖刀美ちゃんったら。
 でもどれも民俗学的には充分珍しい物ばかりだよ?」
そう言うと陽子は宝物を調べ始めた。
「そ、そうだよね…。あはは…。
 さ、さてと…んじゃ私も見ていこっか…。
 ん〜と…何か面白い物無いかなぁっと…。」
「もうっ、湖刀美ちゃん。
 遊びじゃないんだよ?
 こうやって調べておけば将来民俗学の、
 ひいては歴史学全体の発展に大きく貢献できるんだから。」
「はいはい、わかりましたよ……っと、何だろこの長い箱?」
そう言うと湖刀美は棚の上から大小二つの細長い箱を取り出し床に置いた。
「え、どれどれ?」
それを見て陽子も箱のそばに寄ってきた。
「何だろコレ…二つとも似たような字が書いてあるからセットなのかな…。
 読めないけど…。」
「えっと…大きい方の箱が…『妖刀…村正』…。
 小さい方が…『妖刀村正…由来…書』…?」
「すっごぉい…陽子…コレ読めるの?
 ミミズがのたくったようにしか見えないんだけど…。」
「何年民俗学者やってると思ってるの?
 といってもまぁ、
 最近ようやく辞書無しでも少しだけ読めるようになってきた所なんだけどね。
 これは崩し字って言って、昔の人が使っていた文字だよ。」
「え? 昔の人って漢字使ってたんじゃないの?」
「これだって立派な漢字だよ。
 きっちり綺麗に書いてたんじゃ時間がかかるから、
 こうして簡単な形にしてサラサラッて書いてたんだよ。
 ほら、アルファベットにも筆記体ってあるでしょ?
 あれと同じようなものだよ。」
「そうなんだ…。」
「でもこれって結構危険かも…。」
「え?」
「ほら、ここ見て。お札で封がされてて開けられなくしてある。」
「あ…ほんとだ…。」
「けど妙だね…。
 『妖刀村正』って確か江戸時代の迷信で…、
 幕府にとって縁起が悪かったってだけで妖刀扱いされただけのものなのに…。
 何でこんな封がされてるんだろ…。」
「あ、『妖刀村正』ってそういう物だったんだ…。
 ずっと本物の妖刀だと思ってた…。あはは…。」
「そんな訳無いでしょ。
 でも…その通説だとこれの説明がつかないんだよね…。
 もしかして同名の別の刀匠が作った別の刀…?
 それとも村正が本当に妖刀だったとか…?
 どちらにしろ本物の妖刀だったら大発見だよ…。」
「ウチの蔵の宝物って封印された妖物だって言われてるのも沢山あるからね…。
 案外本当に本物の妖刀だったりして…。
 もしそうならちょっとシャレにならないけど…。」
「そ、そうだね…。」
そう言いつつも湖刀美は大きい方の箱を見て言い知れぬ不安を抱いていた。
(でも…この大きい方の箱…なんだか本当にヤバイ感じがする…。
 張ってあるお札も力の痕跡みたいなのは感じるけど…それ自体からは力を感じない…。
 おじいちゃんに見てもらった方がいいかも…。)
すると湖刀美が突然立ち上がった。
「ど、どしたの?
 湖刀美ちゃん?」
「なんかコレって本当にヤバイかも…。
 おじいちゃん呼んでくる!
 陽子!絶対そのお札に触っちゃ駄目だよ!」
そう言うと湖刀美は急いで蔵を出て行った。

「こ、湖刀美ちゃん…。」
一人取り残された陽子は二つの箱を見た。
(湖刀美ちゃんがあんなに慌てるなんて…。
 これってもしかして本当に危ない物なの…?)
そう思い陽子が大きい方の箱にそっと手を触れた時だった。
 ピリッ…ピリピリッ…
突然封をしてあるお札がひとりでに真っ二つに破れた。
「えっ!? な、何!?
 お札が勝手に…!!」
驚いた陽子は慌てて手を放した。
(な、何なの!? 今の…!?
 何でお札が勝手に破れたの…!?)
戸惑いながら陽子はおそるおそる大きい方の箱に近づいた。
その時だった。
 シュゥゥゥゥゥゥゥゥ……
大きい方の箱の蓋の隙間から薄い紫色の煙のようなものが流れ出てきた。
「な、何!?」
陽子は驚いて飛び退った。
すると煙はものすごい速さで陽子に近づいていき、
逃げようとした陽子の体を包み込んでいった。
「ひっ!? い、嫌ぁっ!!」
(な、何!? 何なのこれ!?
 な…なんか…頭がボーッとしてきた…
 駄目…何も…考えられない…
 こ、湖刀美…ちゃん…助…けて…)
そこで陽子の思考は途切れた。
そして瞳から正常な光が消え、
陽子は虚ろな表情のまま大きい方の箱をじっと見つめていた。
すると陽子の頭の中で声が響いた。
〔封ヲ解ケ…我ヲ手ニセヨ…〕
「…はい…。」
その声に素直にうなずくと、陽子は大きい方の箱を手に取ろうとした。

その時だった。
「陽子!!」
突然声がした。
「!?」
その声に反応して陽子の瞳に光が戻ると同時に、
陽子を包んでいた煙が消えた。
「あ、あれ…私…一体…?」
陽子ははっとしてまわりを見回した。
すると湖刀美が陽子に駆け寄り、陽子の肩を掴んだ。
「陽子!? 大丈夫!?
 何があったの!?
 今のもやみたいなのは何!?」
「えっと…確か…大きい方の箱の封が勝手に破れて…
 箱の隙間から紫色の煙みたいなのが出てきて…
 逃げようとした私の体を包み込んで…
 そしたら頭がボーッとして何も考えられなくなって…
 それからは…よく…わからない…。」
「妖刀に魅了されかけていたようじゃな…。」
湖刀美の祖父も陽子に歩み寄ってきた。
「おじいさま…。」
「わしらが来るのがもう少し遅ければ…、
 陽子ちゃんは妖刀に取り憑かれていたかもしれぬ…。」
「えぇっ!?
 お、おじいちゃん、これってやっぱり本当に妖刀なの?」
「そうじゃ。それもウチの神社と深い因縁がある物じゃ。」
そう言うと湖刀美の祖父は服の袂(たもと)からお札を取り出し、
それで大きい方の箱に再び封をした。
「深い因縁? ウチの神社に?」
「うむ。」
「どんな因縁なんですか?」
「今からおよそ300年前、
 この土御門家の先祖であり我が家に代々伝わる土御門流剣術の基礎を作り上げた
 土御門刀破(桐葉)様がその命と引き換えに封印した最も凶々しき妖刀なのじゃ。」
「えっ?
 おじいちゃん、刀破様って確かウチの神社の…。」
「うむ。ご祭神様じゃ。
 刀破様はその妖刀を封印した功績によってご祭神として祀られるようになったのじゃ。
 もっとも、言い伝えによると生前非常に強力な力を持っておったそうじゃから、
 普通に天寿を全うしても祀られておったかもしれんが。」
「そうだったんだ…。」
「そんな凄い人が命と引き換えに封印したという事は…
 これって相当危ない物だって事ですよね…?」
「あっ、そうだ!
 陽子、おじいちゃんにお祓いしてもらった方がいいよ!」
「そうじゃな。
 今は大丈夫なようじゃが、後々どんな影響が出てくるかわからん。
 やっておくべきじゃろう。」
「は、はい。
 すみません…。」
「では祭殿に参ろうか。」
そう言うと湖刀美の祖父は立ち上がり、蔵を出ようとした。
そして湖刀美もその後に続こうとした。
「あ、あのっ。」
その時陽子が声をかけた。
「なんじゃ?」
「どしたの?」
「あ、あの…こ、この巻物…お借りしてもよろしいでしょうか…?」
「何じゃと?」
「だ、駄目だよ! 危険だよ!」
「そうじゃ。
 こんな事があった以上何があるかわからん。」
「で、でも…こんな妖刀の由来がわかれば間違いなく大発見ですし…。
 湖刀美ちゃん達のご先祖様の事がもっと詳しくわかるかもしれないですし…。
 き、危険なのは承知の上です…。
 お願いですっ、この巻物を貸してくださいっ!」
そう言って陽子は深々と頭を下げた。
「よ、陽子…。」
「ふぅ…、
 仕方ないのう…わかった、貸してやろう。」
「おじいちゃん!?」
「本当ですか!?」
「ただし、陽子ちゃんと一緒にその巻物のお祓いも行う。
 念には念を入れんとな。
 それからこのお札も渡しておこう。」
そう言うと湖刀美の祖父は袂からさらに3枚のお札を取り出し、
陽子に手渡した。
「我が家に伝わる破邪の札じゃ。
 それで多少の危険は防げると思うが…。」
「あ、ありがとうございます…。」
「さて、では祭殿に参ろうか。
 長くなるじゃろうからお家に電話を入れておきなさい。」
「あっ、そうだ!
 せっかくだしウチで晩ご飯食べていきなよ!」
「えっ、いいの?」
「ああ、構わんとも。是非食べていきなさい。
 湖刀美、母さんに知らせてから祭殿に来なさい。」
「はーい。」
そうして三人は蔵を後にした。


−続く−

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